【意味】
象牙の塔(ぞうげのとう)とは、フランス語の la tour d’ivoire の訳語。俗世間を離れて、もっぱら静寂・高逸な芸術を楽しむ芸術至上主義の境地。また、学者が、現実を逃避して観念的な態度で送る学究生活やその研究室。
【語源・由来・成り立ち】
象牙の塔(ぞうげのとう)の語源・由来について、原語のla tour d’ivoire は、フランスの批評家サント=ブーブが詩人ビニーの態度を評した語であるが、旧約聖書の雅歌七章四節にも見える。
日本では、大正九年(一九二〇)に出た厨川白村「象牙の塔を出て」によって一般に広まったとされる。当時の聖書の日本語訳では「象牙のやぐら」とされていた。
【使い方・実例・用例】
*近代文学十講〔1912〕〈厨川白村〉四・一「所謂『象牙の塔』のなかに隠れて現代生活を忘れようとする」
*田園の憂鬱〔1919〕〈佐藤春夫〉「象牙の塔で夢みながら、見えもしない人生を俯瞰した積りで生きて居る夫」
*雲のゆき来〔1965〕〈中村真一郎〉七「彼の芸術は象牙の塔へ引き籠ってしまいます」
【漢字辞典】
「ぞうげのとう」を漢字で書くと「象牙の塔」と表記する。