【意味】
遠称の指示代名詞。指示代名詞「あ」に接頭語「れ」の付いた語のこと。
【語源・由来】
奈良時代までの文献には「あ」「あれ」は見えない。古くは「これ」対「かれ」、「こなた」対「かなた」のように、近称「こ」対遠称「か」の対立が中心的であった。
平安時代に「あ」「あれ」が現われ、しばらくは「か」「かれ」と共存して、おおむね、「あ」「あれ」は現場にない対象、「か」「かれ」は現場に見える対象のように使い分けられていたものと考えられる。
中世に入ってしだいに「か」「かれ」が衰退し、遠称はもっぱら「あ」「あれ」が担当することとなった。
【実例・用例】
*枕草子〔10C終〕一五二・人ばへするもの「親の来たるに所得て『あれ見せよ、やや、はは』などひきゆるがすに」
*虎明本狂言・鬼瓦〔室町末〜近世初〕「あれは鬼がはらといふ物でござる」
*浄瑠璃・曾根崎心中〔1703〕「ヲウ、ヲウあれじゃ何も話されぬ。わしがするやうにならんせ」
【漢字辞典】
「あれ」を漢字で書くと「彼」と表記する。