【意味】
とちるとは、舞台などでうろたえて拍子を失い、せりふやしぐさをまちがえる。浄瑠璃・歌舞伎の社会で用いられ、その他の芸能分野にも広まった。他動詞的にも用いる。
【名前の由来語源・成り立ち】
とちるの名前の由来語源について、「とち」は、室町時代からあわてふためく意で用いられていた「とちめく」の「とち」と同源で、「橡麺坊(とちめんぼう)」に由来する。
「橡面坊」は橡の実の粉を原料にした橡麺を作るときに使う棒のことで、せわしく伸ばさないと橡麺が固くなってしまうところから、あわてるさまやあわて者をたとえていうようになった。
【使い方・用例・実例】
*滑稽本・大千世界楽屋探〔1817〕下「思唄(さはぎうた)の出端が弾流を狼狽(トチッ)て、引込の合方が、ワカになりやす」
*漫談集〔1929〕見習諸勇列伝の巻〈徳川夢声〉「次席弁士のTが、台辞を忘れてトチッたところ」
【漢字辞典】
「とちる」の漢字表記は不明。